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何とか乗り切ればいい?    

松田 昇

 

  20年ほど前、「雪が降ると車はみなゆっくりと走るようになり、どこか街は落ち着いたようになる」というようなことを学級通信に書いたら、一緒に担任をしていた若い女の先生が「私この文章好きやわあ」と言ってくれた。今年も雪が降り出した頃、そんなことを思い出しながら車を走らせていたが、2月になってそんなのんびりしたことを考えておられないほど、雪がどんどん積もりだし、大変なことになった。

 でもこの頃は、雪かきで痛めた腕や腰をさすりながら、雪道に車がはまって助けられたり、助けたりしたことも、通勤にいつもの何倍もの時間がかかっていやになったことも、あの時は大変だったという思い出話の中に埋もれ始めている。

 誰でも大雪にまつわる話の一つや二つあるだろう。養護学校に勤めていた頃、雪が激しくて下校時にスクールバスが学校まで来れなくなり、職員も車で帰れなくなり、生徒共々歩いて下校したことがある。また、雪のため大渋滞しスクールバスで下校した最後の生徒が家に着いたのが23時過ぎだったとか。どちらの場合も生徒たちは辛抱強かった。これらは時間の経過とともに笑い話とまではいかないが、決して隠しておきたい話にはならない。何とか乗り切ってきたからだろうか。

 ところが政治の世界では、ほとぼりが冷めるまでなんとか凌いで、あったこともなかったことにして、隠せるものなら隠して何とか乗り切ろうという見え見えのことが平気で行われている。森友学園の問題しかり、加計学園の問題しかりである。

 中でも私が最も納得がいかないのが、米軍の相次ぐ事故に対して日本の警察や関係機関が何一つ手を出せないことである。つい先日も、青森県の湖にエンジンに不具合が起きた米軍機が燃料タンクを落としていった。幸いけが人は出なかったものの、シジミをはじめとする漁への被害は何百万円にもなるという。それに対して米軍は補償どころか、謝罪の言葉一つない。これが米軍機でなければ当然謝罪、補償という話になるのに。

 日本にいる米軍のことを調べると、それこそ隠し通しておきたい日米両政府の事情があるようだ。日米地位協定や旧安保条約によると、米軍機は日本の上空を好きに飛んでいいらしい。一方日本の旅客機等は、米軍基地の上空など、飛ぶのに許可のいる空域がある。基地は沖縄だけでなく関東にもあるし(横田)、東京のど真ん中にもある(六本木ヘリポート、南麻布米軍センターなど)。米軍関係者はそこへは自由に行き来できるし、実際に昨年トランプ大統領が来日した時はそのルートを使った。米軍は日本国内のどこにでも基地を造ることができることになっているので、ロシアは北方領土を決して日本に返さないとも。そして米軍機は、アメリカ本土では絶対に民家や学校の上空を低空で飛ばないのに、日本ではそれが許されている。

 隠して乗り切るのではなく、努力して乗り切る姿に人は感動するのだが。