· 

民主主義を考え直す    

 松田 昇

 

 誕生月を迎え介護保険証が送られてきた。ついに自分も高齢者の仲間入りをしたかというところである。

 2015年の統計では日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は26.7%だそうである。現在の日本においては「4人に1人が高齢者」ということになる。さらにある機関の推計では、2035年にはそれが33.4%となり、「3人に1人が高齢者」になるという。

 こうした超高齢化社会を迎えて、「シルバーデモクラシー」ということが危惧されている。シルバーデモクラシーとは、有権者のうち、高齢者が占める割合が高いため、高齢者の意見が過剰に政治に反映されやすい状態を指す。数年前の大阪都構想に対する住民投票が例としてあげられている。あのとき、30代、40代の若い世代は賛成が多かったけれど、人口の多い70代に反対が多く結果として否決されたという。若い世代にすれば、将来の大阪についての選択なのに、自分たちの意見より、先の短い人たちの意見が反映されたと感じたことだろう。ほかにもいくつかの例があるが、これらについてはもっと慎重に分析すべきだという意見もある。

 ただ現実に高齢者が多くなってくると、その世代の意見が政治だけでなく、町内会の運営に至るまで強く反映されてくることは容易に想像できる。すると若い世代からは「票の価値を平均余命とリンクさせるべきだよね。」というようなつぶやきが聞こえてきている。

 私たち戦後教育を受けてきた日本人は「民主主義」は絶対的に正しいものとして教えられてきた。政治の正義は民主主義にあると歴史が教えていると。だから、近いところでいえば「共謀罪」が賛成多数で可決されれば、それが強行採決であれ何であれ、それ以上蒸し返すのは民主主義を否定する行為と映る。小学校以来、意思決定に何かと多数決を経験してきた日本人は、民主主義=多数決と誤解しているようだ。

 地球上には民主制ではない国がたくさんある。サウジアラビアは、国王であるサウード家の国という意味だそうだ。議会はあるが、国王の任命制である。

 政治の民主化を求めて一般国民が立ち上がったアラブの春だが、その後民主化が成功したのは発端となったチュニジアだけだという。民主主義を教育されていない地域で、急に民主的国家を作ろうとしてもうまくいかなかったとも言われている。逆に、民主的な選挙で選ばれたアメリカのトランプ大統領のしていることは、権力をフルに活用した独善・独裁に近い。こうなってくると、何が民主主義なのかよくわからなくなってくる。

 とりあえずは近いところだけでもみんなの意見を取り入れて運営していこうということで、我が法人の65歳定年制は理事長兼務職員には適用しないことを就業規則に明記しようと事務局会で決定された。