外出支援が定着するまで    

 松田 昇

 

 Oさんの外出支援の相談を受けたのは、昨年の5月でした。何かに興味があってそこに出かけたいというより、休日に家から連れ出そうとしてもなかなか出ないし、そうするとストレスもたまる悪循環で自傷行為があるなど、ご家族としても何とかしたいという相談でした。

 何ができるか分からないけれど、とにかく30分からでもということで6月から始めました。とりあえず、公園に行って散歩でもということで家に迎えに行くと、玄関まで出てきましたが手を横に振って「行かない」という意思表示。待つこと30分、お母さんが説得してくれて、何とか車に乗りました。しかし、着いた先の公園では車から降りようとせず、あきらめて家に帰りました。

 どこへ行くのか分からなかったことが原因かと思い、行き先の候補を2か所、写真に撮って事前に渡し、自分で選んでもらうことにしました。そうして迎えた2回目、自分で選んだ写真の公園まで行きましたが、駐車場で車から降りりると、すぐにまた車に戻ってしまいました。3回目にしてようやく、公園の中を少し一緒に歩くことができました。

 そうこうしているうちに季節も冬に向かい始め公園の散歩も難しくなってきたので、行き先の候補としてプールと、ショッピングセンターの写真を見せると、Oさんはプールを選びました。そしてプールバッグを持ってニコニコと車に乗り込んできました。しかし、プールに着くまでの道中、また不安になってきた様子が見られたので、プールの写真を何度も見せ、今からプールに行くことを伝えました。そしてようやく着いたプールでは、ドボンと1回つかるとすぐ上がってきてしまいました。

 ともかくヘルパーと一緒にプールに出かけるということが分かってきた頃、ヘルパーが別の用事でOさんの通う作業所に顔を出しました。Oさんに声を掛けるとニコニコとしていました。

 その日から数日間、家に帰ってOさんはヘルパーの写真を持ってきてお母さんに見せたそうです。ヘルパーが作業所の方へ行ったことを知らないお母さんは「今度○○日にプール行くからね」と答えていたのですが、作業所の方でプールに行く日の朝、プールバッグといっしょにまたヘルパーの写真を持ってきたそうです。後日、作業所の方からヘルパーが来たことを聞いて、ヘルパーの写真を持ち出してきた理由を知ったお母さんは、ヘルパーとプールに外出することがOさんの中にしっかりと入っていることが分かったと話してくださいました。私たちにとっても手応えを感じることのできる嬉しいお話でした。