理容師さんたちの気づき

松田 昇

 

 障がいのある人と出かけていて残念なのは、お店などで本人が注文したり、尋ねたりしても、隣にいる私たちヘルパーに向かって答える人が多いことです。その都度、相手の人が気を悪くしない程度に本人に向かって答えてほしいことを伝えます。

 ある理髪店に視覚障がいのAさんに同行しました。いつも行く理容店なのですが、担当された理容師さんは、初めての方のようでした。するとその理容師さんが、どういう風に切るかを2、3メートル離れたところにいた私に尋ねてきました。「本人に聞いてください」と言おうとしたその時Aさんが、自分に言われたと思って答えられました。すると理容師さんははっと気づかれたようで、その後Aさんにわかりやすいように一つひとつ説明してから取りかかっていました。

  1か月後、またその理容店にAさんと行くと、今度は違う理容師さんでした。その人は、私に聞いてくることはなくAさんと直接話をしながら進めていました。しかし、以前なら何も言わないで熱いタオルを顔に当てたりしていたのが、今から何をするかを言ってからしているように見えました。そして最後に料金の支払いの時、レジのところで待つのではなく、待合の椅子に座っているAさんのところまで来て受け取ってくれました。

 本当にちょっとした配慮なのですが、前回のできごとを理容師さんの間で共有して学ばれたのかなあと、少し嬉しくなりました。街に出ることでこうやって気づきを得る人が増えるといいなと思います。