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病室の中で学んだこと

松田 昇

 

 昨年11月末、真夜中に急にお腹が痛くなり救急車で病院に運ばれた。診察の結果は急性虫垂炎、入院して経過観察ということになった。1日経って少し良くなったように見えた矢先、急にまた痛み出して検査の結果、緊急手術ということになった。炎症が腹膜にまで及んでいて腹膜炎だったと聞いたのは手術後、結局2週間の入院となった。「松田は体調が悪くてしばらく休む」とだけ聞かされた人には、「ずっと悪かったのを我慢して仕事していたのか」とか「やっぱりトシだからね」と思われた人もいるようで、誤解なきように今回書かせていただく。そうではないと。 

 入院中は4人部屋で、コロナのため見舞いの出入りもなく,同じ部屋の人と言葉を交わすどころか顔を合わすこともなかった。しかし看護師さんとの会話の声だけは聞こえてくるので、どの方も私と同じくらいの年代だろうと想像できた。

 ある晩、隣の患者さんと看護師さんとのやりとりが聞こえてきた。隣の患者さんは,奥さんに先立たれ,自分で食事を作って食べているうちに病気になり入院することになったことを悔いているようだった。看護師さんは,夜勤で人の少ないときにあまり時間をかけられないことを気にしつつ、しっかりとその話を聞き受けとめていた。まだ若い看護師さんだったが、この人はどこでこうやって人の話を受けとめるすべを学んできたのだろうかと感心した。

 また向かいの患者さんは、看護師さんたちに対していつもとても丁寧な言葉で話されていた。普段の仕事や生活でそうしてなければできない言葉遣いのように思えた。

 一方私は,1年目という看護師さんが点滴の針がなかなか上手くさせず、見ていた指導役の看護師さんが代わりにやってうまくできたとき、「さすが」と言ってしまった。その後その若い看護師さんが担当に時には、向かいの患者さんを見習って言葉を交わすようにしたのだが。

  医師も朝、夕と毎日様子を確かめに来てくれた。それも診断した医師、手術した医師、1年目の勉強中の医師の3人がバラバラに。毎日来るので、休みはないのかと聞いたくらいである。

 2週間の入院期間中、コロナ禍の中にありながら、医療に携わる人たちの職務に対する情熱を感じた。その熱い想いが伝わってきて元気が出せた。さて、私たちも熱い想いを利用者さんたちに届けられているのだろうか。まだまだしなければならないことがある。