ピンチヒッターだからこそ感じられたこと

 

 

松田 昇

 

 4月初め、いつもCさんと出かけているヘルパーが休みを取ったので、代わりに入った日のこと。Cさんとは移動支援を使い始めたときいっしょに出かけていたが、他の職員が行くようになってもう1年以上経っていた。本当に久しぶりのことだった。まずコンビニに寄ってお菓子と飲み物を買い、それからプールに行って歩いたり、泳いだりというパターンは同じと聞いていた。

 コンビニで買うお菓子もいつも決まっており、Cさんはささっとかごに入れ、レジに行った。500円玉一個でおつりがくるのは変わらない。レジのアルバイトらしきお兄さんに「袋はどうしますか?」と聞かれた。「しまった」と思った。私がいっしょに出かけていたときはまだレジ袋は有料ではなかった。Cさんはプールバッグを持って店に入っている。そこに入れるのかなとも思いつつ、とっさに「いつもどうしてますか?」とレジの店員さんに聞いた。しかしその店員さんは、まだ入ったばかりらしくて分からない様子だった。その時、後ろの方から「すみません、気がつかなくて。いつも袋に入れてます」と別の店員さんが声をかけてくれた。「気がつかなくて」という言葉に、いつも気にかけてくれていることを感じ、うれしかった。

 プールに着いて、まずトイレに行ってというのは変わらない。変わったのは、受付で検温をすること。機械の前に立つだけで、他の人とも来ているので、ここは戸惑うことはなかった。更衣室に入り、以前と同じくさっさと着替え、私を待ってくれた。

 夕方、スポーツ少年団の子どもたちがどっとやってくる前のすいている時間帯で、数人の方が歩いたり、泳いだりしていた。端の歩行コースに入って歩き出してすぐ、一人の年輩の女性が、「こっち、こっち」とばかり隣の遊泳コースを指さしてくれた。そして「いつもの人は?」と声をかけてきた。まだ誰もいない隣のレーンに入り、すれ違いざま、さっきの女性にお礼を述べ「今日はピンチヒッターで」と答えた。プールでも気にかけてくれている人がいることを知り、またうれしかった。