感じる視線はどこから  

 宮野 由美

 

 笑顔がとてもチャーミングな Tさんとは月1度ほど外出をしています。毎回、見たいもの、欲しいものを言われるので、何処へ行くかは相談して行き先を決めています。イオンモール新小松や小松平和堂へはよく行きます。洋服を見たり、本屋さんで雑誌を見たり、ウインドショッピングを楽しみ、昼食を食べる事が多いです。

 Tさんは 電動車椅子に乗られています。ゆっくりですが自由自在に動かし、洋服店の狭い通路でも、とても器用に移動されます。

 お店の中を電動車椅子で移動していると、たくさんの視線を感じます。特に小さな子どもは興味深々で、近くに寄ってきて不思議そうに見ています。「気になる?」とニコッと笑って声をかけると、恥ずかしそうにうなずく子もいれば、急いで走って逃げていく子もいます。電動車椅子に乗っている人がめずらしいのだと思います。

 小松の平和堂へお出かけした時のことです。フードコートで楽しくおしゃべりしながらお昼ご飯を食べていると、隣に座っていた年配の女性が急に声をかけてきました。少し視線を感じるなぁ~と思っていたところだったので、びっくりしました。

 その女性は、「急に声をかけてごめんなさい。楽しそうで良かった。」と笑顔で話をされました。隣のテーブルには、車いすに乗られたご主人と思われる人がおられました。私たちがとても楽しそうに話していて、うれしくて声をかけたとのことでした。これからも楽しくお出かけしてねと言われたあと、ご主人のところへ戻られました。詳しいことは分かりませんが、ご主人は身体が思うように動かせない様子で、会話もあまりされていなかったので、私たちの様子が嬉しかったのではと思います。

 Tさんと見つめ合って「びっくりしたね」と会話をしながらまた、お昼ご飯を食べました。私たちは、ごくあたりまえにお出かけをしているのに、周りの人達は、気になる存在なんだと感じます。そのためか、Tさんは、電動車椅子が大きいこともあり、移動や食事の時に、「邪魔になってない?」と、周りに気を使われます。「全然大丈夫」と答えると、ニコッと笑って安心されます。その謙虚さには、いつも頭が下がります。

 遠慮せず、これからも、やりたいこと、楽しいことを見つけて、堂々と街の中へ出かけて欲しいです。たくさんの出会いが待っていると思います。