自分を見て知ってもらう

藤山 雄一

 

 私があんとふるで常勤ヘルパーとして働き始めてもうすぐ一年が経ちます。これまで様々な方たちと接してきて、自分の中でも働く上で一つの方向性のようなものがみえてきたように思います。今回はその方向性の礎の一つになったエピソードを紹介いたします。

 利用者の Ⅿさん は脳性小児麻痺による四肢機能障がいの方です。支援では車いすに乗られて、それを私が後ろから押して移動します。首から下の動作は難しく、首も完全にコントロールすることが難しい方で、会話も上手く言葉を発音することが難しいので、聞き慣れていなければ理解するまでに時間がかかったりします。私も初対面の時はいささか動揺したことを憶えています。しかし、そんな心配も数回支援を経たときにはすっかり霧散して、移動中の車内で談笑する程になりました。 Mさん の趣味はスポーツ車全般で、私と趣味が合いました。支援中も移動中の車内では車について話したりと楽しい時間を過ごさせてもらえています。

 

 事が起きたのはある支援の時です。モール内を2人で移動しているときでした。休日だったこともありモール内は人で混在していました。そんな状況では嫌でも Mさん に好奇の視線が向かいます。もちろん気分のいいものではありません。その時は私も平静を装いましたが、内には淀んだ感情が渦巻いていました。そしてモールを後にして移動中の車内で、つい私は先ほどの衆人からの好奇の視線に憤慨した気持ちを Mさん に話してしまいました。すると Mさん は「気持ちの良いものではないけど、僕を見る人が多いほど僕みたいな人がいる事を知ってもらえる訳だから悪い事ばかりじゃないよ」とおっしゃり、続けて「外出するのは元々好きだけど、そういうことを考えると外出もより意味あるものになると僕は思うよ」と言われました。それを聞いた時、私は当事者である Mさん が一番傷心しているはずなのに感情をコントロールできていなかった自分を恥じ、同時に Mさん を尊敬しました。

 

  このことは私にとって「社会の感情的なバリア」の存在を大きく感じた事と、それに対し当事者たちの気持ちを深く考えさせてもらえるきっかけになりました。これからも利用者の方を通じて「気づき」や「発見」を支援に活かしていこうと思います。