藤山 雄一
加賀市のプール施設が老朽化により新たな建物へ移転することになったのですが、そこで困るのはIさんでした。Iさんはいつも旧プール施設をこだわって利用され、そのプールに向かう道順にも強いこだわりを持たれる方です。私は移転までの約1ヵ月間、移転先のプールに行ってくれなくなるかもと思いプランを色々と練りました。案➀まずは新プールのある道を通って本人に場所を認識してもらうところから始める。案②旧プールの場所を一度経由して、プール施設が無くなったことを理解してもらう。案③普段プールが営業していない時に代替で利用している公園に行き、徐々にプールにお誘いする...などと考えていました。しかし気になる当日、ひとまずIさんに確認して新プールへ車を走らせました。Iさんは最初こそ道順の違いなどにモヤモヤとした表情をされていましたが、施設に到着し、そこがプールと判ってしまえば特に拒否感もなくすんなりプールで遊泳されたのでした。幸いと言っていいと思いますが、用意していたプランは一切活躍することはなかったのです。Iさんはこれから数回通われて、今では新プールを慣れた様子で遊泳されています。
似た話をもう一つ。
Oさんは私ともう一人ヘルパーを同行した3人で出かけます。以前は別の2人のヘルパーと出かけていたのですが、しばらく途絶えていました。私たちと一緒に出掛けた際は目的地にした公園に行くまえに本人が引き返してしまわれ、以降もそれが続きました。そんな中でも公園までの車内で声をかけたり、笑顔を見せてくれたりと良好なコミュニケーションは出来ていたと思います。その様子を見ながら「ゆっくり徐々に慣れてもらえれば...」と思っていました。しかし、そのあと数回ほど一緒に出かけでも、公園内に入ることは叶いませんでした。それでも、私たちと一緒に出かけることに抵抗はなさそうでしたので、目的地を以前の活動で行っていたプールに変更することにしました。目的地が替われば好転するかもしれません。ですが私は楽観視せず、これまでのイメージから「とりあえず車に乗って目的地に着くところを目標にしてから、次に車から降りてプールのある公園内の敷地に入って、それからは...」と徐々にステップアップ出来ればと考えていました。そして
いざフタを開ければ一足飛びどころか、十足飛びでOさんは公園内をスタスタ歩かれ、プールの受付を済まされ、悠々と笑顔でプール内を歩かれたのでした。本人にとっても目的が一致した結果なのかもしれません。Oさんもまだ回数は少ないですが今のところプールに行けています。
「『案ずるより産むが易し』だなあ」この2件を経たときの感想です。考えていたより実行に移すと上手くいくことってありますが、私はこの2件もそうだと思いました。でも実は、その「考えていた」が大切で、その考えが深いほど「案ずるより産むが易し」と感じやすいのだと思います。
このことわざの意味を調べると「あれこれ考えるよりも実行すると案外たやすい」という意味と出てきます。でも私はこのことわざの真意は「あれこれ考えるからこそ、実行したときにたやすく思える。なのでしっかり考えるべき」なのではないかと思うのです。これからも大いに案じていこうと思います。
