お店の人の応対にすがすがしい気持ちに

津田 康則

 

 Tさんは月曜日から木曜日まで毎朝ウォーキングしています。そして足湯や食事を楽しんでいます。いつも行きと帰りの2回、ある酒屋さんの自販機で飲み物を買って飲みます。

 財布の中にはいつも千円札が折って入っていて、行きはそれを上手に手で伸ばし、自販機に入れ飲み物とお釣りをとります。帰りは残りの硬貨を全部入れ、ボタンを押し、飲み物とお釣りをとります。

 先日、いつものように千円札を入れるのですが、何度入れてももどってくるのです。「入れましょうか?」と私が声をかけてもやめません。そのうち千円札を持って、店の玄関に向かいます。付いていくと、まっすぐにレジに向い、お店の人に千円を渡しました。お店の人がTさんに向かって「両替ですか?」と聞き、答えが帰ってこないと「両替しますね」と言って五百円玉1枚と百円玉5枚に両替してくださいました。Tさんはそれを財布に収めました。お店の人は毎日、自販機を利用しているTさんを見ていて、言葉のないTさんが両替してほしいことを察して、応対してくれたのです。しかも、ヘルパーの私ではなく、きちんとTさんの顔を見て声をかけ、応対してくれたのです。

 その後、私はTさんが店を出て自販機で飲み物を買うものと思っていたのですが、Tさんは店の奥にどんどん入って行って、飲み物のケースを開け、アクエリアスを取るとそれをレジにおきました。お店の人は「百六十円です」と言ったので、私がTさんの財布から二百円を出し、Tさんに渡しました。Tさんかお金を受け取ったお店の人は、Tさんに笑顔で「ありがとうございました」と言ってお釣りをTさんに渡しました。Tさんもそれに応じてペコリと頭を下げました。そして、店を出て、いつもの木の下に座ってアクエリアスを飲みました。

 実はかなり前に、Tさんが両替をしたことがあると後で知りました。私はTさんがそのことを覚えていたことと、お店の人の応対にすがすがしい気持ちになりました。