毎朝出会う人たちと

松田 昇

 

 Tさんとは、ヘルパー4人が月曜日から木曜日まで、毎朝交代でウォーキングに出かけています。毎日、同じ時間に、ほぼ同じコースを歩きますから、いろんな人に見られています。

 中には声をかけてこられる方もいて、私などは「お父さんですか?」と尋ねられたことがあります。「いや、付き添いで、これが仕事なんです」というと「ああ、ボランティアですか」「いいえ、ちゃんとお金はいただいています」という具合で、ガイドヘルパーという仕事の認知度はかなり低いようです。

 夏は木陰となって涼しい雑木林の脇の歩道、約100mを掃除してくれている年配の男性がいます。自分の家の前でもないのに、そこを歩く人たちのために、天気のいい日にホウキとリヤカーを持ってきて、きれいにしてくれているのです。

 出会うたびに「おはようございます」と挨拶していたのですが、ある日感謝の気持ちを込めて「いつもきれいにしてくれて、ありがとうございます」と伝えました。一緒に歩いていたTさんにも「挨拶しましょう」と促すと、話せないTさんはていねいに頭を下げて挨拶をしました。その日以後、その人に出会うと挨拶の後「今日は過ごしやすい日ですね」とか、簡単な言葉を交わすようになりました。

 

 他にも声をかけてくれる人が何人もいます。Tさんは声をかけられても黙って通り過ぎるだけで、促さないと挨拶しないところが残念なのですが、どの人も口をそろえて「元気やね」と言ってくれます。そして、いつもどれだけ歩いているとか、先ほどのような「お父さんですか」という会話になっていくのです。そうやって何度も挨拶や会話を交わした人は、Tさんにも「行ってらっしゃい」と言ってくれます。まずは、ヘルパー自身が人とつながっていくことが大事だと教えられます。