「これは高いですか?」

  Mさんは、月に一度、あんとふるを利用して、お買い物をしたりご飯を食べたりしてお出かけをします。かわいいものや塗り絵が好きで、文房具店や100円ショップ、本屋でサンリオグッズや塗り絵を購入したりしています。コーヒーも好きで、いつも必ず喫茶店に寄り、コーヒーを注文されます。

 ある日のお買い物のおでかけをしている時の話です。Mさんが好きな文房具のコーナーへ行き、1000円ちょっとする色鉛筆を手に取りました。私はいつも通り、色鉛筆の値段をお伝えすると、Mさんが「これは高いですか?」と尋ねられたのです。その時私はいつも聞かれないことだったためすこしびっくりしましたが、どう答えたらいいのか考えて、「千円のお札2枚で少し小銭が返ってきます」とお札の枚数で答えてみることにしました。Mさんはそれを聞いて、少し考えた表情をした後「やっぱりやめます」と言われ、色鉛筆を棚に戻されました。

 その日はそのショッピングモール内で食事をすることにしました。食事をする店舗を探す為に、歩きながら探そうということになり、フードコートからレストラン街に向かって歩き始めました。私ははじめは、フードコートで何か選ぶのかな?と思っていたのですが、あまり迷うことなく、サイゼリアの前で立ち止まりました。「ここに入りますか?」と尋ねると頷かれたので、店員の案内を受けて席に着きました。食べるものを選ぶ際も、「これはどうですか?」と値段を聞かれました。私は先ほどと同じように「百円玉○枚分です」と答えました。Mさんは食事を決め終えたあと、私に「ここ(サイゼリア)は安いので、ここにしました」と教えてくれました。

 以前は、好きな物を、今ほどはあまり気にせず買われていたMさんだったと思いますが、一度だけ、お金が足りずに好きなコーヒーが飲めなかったことがありました。もしかして、それがきっかけとしてあったのかも、Mさんは貯金も頑張っているので、買い物の時も気を付けるように家族とお話しされたのかも、といろいろ理由を考えましたが、その時は特に聞くことはありませんでした。

 その後、同じショッピングモール内の本屋へ寄り、Mさんが好きな塗り絵のコーナーへ案内してもらいました。そこで素敵な塗り絵と出会ったのですが、塗り絵にしては少々値段のするものでした。私が値段と、だいたい千円札何枚ぐらいかを伝えると、Mさんはとても悩まれました。しばらくしっかり悩んで、「買います」と言われました。先ほどの色鉛筆と似たような値段だったのですが、本当に欲しいかどうか、Mさんなりにしっかり悩んで購入を決めていました。お金を支払って袋にいれた後のMさんに、「いい買い物をしましたね」と話しかけると、にっこりされていました。

 

 いろんなきっかけはあれど、お金の価値を知りたい、お金を大事に使いたいというMさんがすごいなと、ヘルパーとしてだけでなく思いました。そのMさんの気持ちを大事にして、私もおでかけの手伝いができたらと感じました。